研究課題/領域番号 |
23830033
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 団 京都大学, 法学研究科, 助教 (30612387)
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キーワード | マクデブルク法 / 参審人 / 中世中・東欧 / 都市法 / ザクセン・マクデブルク法 |
研究概要 |
平成23年度は、研究計画において挙げた以下4点について調査を行った。 1)マクデブルク参審人団のプロソポグラフィ的調査について、特に大学学籍簿の調査を重点的に行い、予想を超える新知見が得られた。中でも、16世紀以降に参審人となった者たちがどのような学歴を有していたのかについて多くの知見を得られた。これは、これまで大学での法曹養成とは関連付けられることのなかったマクデブルク参審人団研究においてはまったく新しい視点である。また大学において、のちに参審人となる者たちが知り合っていた可能性を示唆する情報も得られ、人脈形成の場としての大学という像も浮き上がってきた。 2)16世紀中頃の皇帝による参審人団廃止を境とする参審人団の検討については、その後、参審人団が活動を再開した段階で、参審人団に占める学識法曹の数が飛躍的に増大したことが分かった。17世紀末にマクデブルク市参事会とブランデンブルク選帝侯の間で交わされた参審人団の再設置について言及した書簡史料を見出した。これはすでにマクデブルク市文書館において確認されていた史料と符合するものであり、実際に書簡が取り交わされていたことを裏付けるものである。 3)参審人による法学文献の検討という点では、参審人の著作について網羅的な調査を行った。その際、これまで著者が参審人であることが一般には知られていなかった幾つかの著作について、その裏付けを得ることができた。こうした知見については、これら文献を所蔵するドイツの諸大学図書館においても著者と著作が誤って関連付けられているケースがあり、重要な発見であるといえよう。 4)マクデブルク法一次史料の調査としては、ハレ大学所蔵ハレ参審人判決集の校訂作業を継続して行った。また、諸文書館での調査において、未刊行の参審人判決を発見した。これについては判決の時期などについて更なる考証を必要としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は平成23年度の目標として、1)参審員団についてのプロソポグラフィ的検討の一環として、都市内要職就任者輩出家門についての調査、2)16世紀中頃を境とするマクデブルク参審員団の動向についての検討、3)参審人による法学文献の検討、4)マクデブルク法一次史料の調査を挙げていたが、1)および3)については、初年度の調査において史・資料をさらに見出したために調査範囲が広がり、当初の予定には到達していないが、研究自体にとっては有意義な新資料が得られたと考えている。2)および4)については、順調に進んでおり、全体としては、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には研究計画通り、平成23年度の調査を継続し、またそれと並行して、暫定的な成果を学会報告という形で問うことにより、他の研究者からの批判・教示を得て、最終的な成果として研究を完結させることを予定している。但し、平成23年度中に新史・資料の発見等により計画よりも若干進度が遅れているプロソポグラフィ的調査と法学文献についての検討に今年度は重点的に取り組む予定である。最終的には、今年度中に本研究計画に挙げたテーマを公表論文という形で公にすることを目指している。
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