研究課題/領域番号 |
23830034
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大村 華子 京都大学, 法学研究科, 助教 (90612383)
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キーワード | 分配政治 / 世論 / 政党 / 政策 / 大砲とバター |
研究概要 |
申請者は、先進諸国において、社会保障と安全保障への資源の分配は国際環境によって規定されているのか、あるいは国内政治的要因によって決定づけられているのかを明らかにすることを目的として、本研究に取り組んだ。また申請者は、本研究の意義を次の2つに定めた。第一は、従来の「大砲か、バターか」、「大砲がバターを産むのか」という先行研究における論争を離れ、社会保障と防衛への富の分配構造を直接的に分析することである。第二は、主要な国内政治的要因でありながら軽視されてきた、「世論」の役割に目を向けることである。 申請者は、この意義づけに基づいて、従属変数に社会保障費と防衛費の分配比率(「大砲バター比(The Guns-Butter ratio : The GB ratio)」)を採用し、主要な独立変数、そして政党の政策を条件づける変数として、世論」の効果を組み込んだ分析を展開した。その結果、世論が直接的に分配比率を規定するというメカニズムは導かれなかったものの、世論の政党に対する支持が充分に高い場合に、政党の政策が分配比率に反映されるという分析結果を得た。これは従来、エリート間で決定されることが自明と考えられていた、高次の政策的意思決定に、世論が少なからぬ影響を与えていることを意味する知見であった。 そしてこの分析結果をもとにした成果は、研究実施計画にも挙げた、2011年9月20日開催の神戸大学とエセックス大学の共同セミナーにおいて報告している。それに加えて、2011年5月15日の日本選挙学会・ポスターセッションにおいても初期の研究を発表した。またその際に執筆した論文は、現在、ある海外の学術誌において「under review」の段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究が、比較的順調に進展している理由としては、複数の研究報告の機会に恵まれ、多くの研究者から改善のためのコメントを多くもらうことができたからである。その過程で、早期に論文を投稿する必要性について教示され、それが研究の進展を促すことになったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請した課題については、順調に研究が進展していることから、派生的な取り組みとして、分配政策における政党の政策実行の程度が、次の政党の選挙でのパフォーマンスをどの程度規定するのかという、循環的なメカニズムについての研究を始めることを計画している。2年目の期間内にすべての研究を完遂させることは困難であると考えるが、そうした研究の足がかりとなる成果を何らかのかたちで提示することができればと考えている。
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