多くの先進国にとって、財政状況改善の必要性が訴えられる中、限りある資源を国際・国内の重要なイシューに対して、いかに振り分けるのか、という点は大きな問題となっている。本研究では、どういった国内外の要因が、国家の限りある予算を安全保障と社会保障する際に影響を与えているのかを明らかにすることを目的に進められた。 それに際して、本研究では、(i)関連するデータセットの選択・統合、(ii)EITMの導入、(iii)実証モデルの設定、(iv)規定要因の特定を目標として、作業を進めた。また作業計画としては、平成24年10月時に完成稿を執筆し、それを海外査読誌に投稿することを目的としてきた。具体的には、各国の軍事費と社会保障費の比率である「大砲バター比(Guns-butter ratio: 大砲バター比)」を従属変数とし、それに政府の性質、議会の党派性、国際環境、選挙制度が与える影響を確かめた。分析の結果、議会で左派が多く、選挙制度が比例代表制であるほど社会保障費の割合は高まり、そうではない場合に、安全保障費の割合が高まることが明らかになった。一方で、国際環境が与える影響は限定的であり、軍事と民生への資源の分配には、主に国内的要因が作用していることが示された。 最後に、研究の成果は、次の3点に集約できる。第一に、「大砲バター比」の規定要因を探ることを目的とした論文の完成稿を、2012年3月には完成させ、現在海外誌への投稿し、査読を受けているところである。第二に、2012年3月には、関連研究を所収した著作『日本のマクロ政体―現代日本における政治代表の動態分析』を刊行した。最後に、関連する研究のレヴューを、『法学論叢』誌に投稿した。
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