三六災害(昭和36年梅雨前線豪雨)から50年を迎えた長野県下伊那郡大鹿村を対象とし、復興の過程で生じた表裏一体の現象―村内の共同的関係の再構築と復興災害―を分析することを目的とした研究を遂行してきた。 初年度は、約40名を生き埋めにした山津波の跡地の、村民運動による公園化と新たな共同性の構築について調査した。今年度はまずこの調査内容を、報告書論文ならびに紀要報告論文としてとりまとめ発表した。 この発表作業と並行して実施した現地調査は、被災箇所周辺の各集落における生活組織の変容、婦人会等生活組織の災害当時ならびに現在の活動、および公園化以降の観光誘致活動に焦点を当てた。これはすなわち、集落生活の共同性ならびに観光コミュニティの共同性の変貌・生成を詳らかにすることを通して、前年度調査で明らかにした公園化をめぐる共同性を、村生活の他の共同性との関連性の議論を通してさらに浮き彫りにすることを目的とした調査である。この調査で得た聞き取りデータおよび婦人会報などの多くの資料について整理を行い、これを発表するための作業を進めた。
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