本研究の目的は、地域社会における中国帰国者の境界文化の実証的研究と、その比較研究を行うことにある。そのため、日本社会で生活する中国帰国者をめぐる地域社会での包摂と排除をエスニック関係という視点から解明することや、地域社会における中国帰国者の境界文化の実態把握を目標に調査活動を行う。 本年度は研究計画の最終年度に当たるため、調査地域をJ地域に焦点を定めて、アンケート調査に関する補充調査を行いつつ、地域での聞き取り調査を行った。また比較検討のために、F地域での調査にも取り組んだ。 現在、昨年度の調査成果と分析成果を踏まえて、中国帰国者の日本への永住・定住を選択した理由、来日後の変化、中国帰国者への帰属意識、地域社会での適応状況、家庭内と家庭外での言語使用、社会ネットワークの変化、家族関係の変容、中国との関係やアイデンティティの志向に関する考察および比較検討作業を進めている。本年度中はこれらの調査成果を参照しつつ、研究報告を7回行ったほか、論文を3本公表した。
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