本研究は、複数種類・複数単位の財を配分する入札制度について、ゲーム理論の枠組みを用いて入札者の戦略的行動及び均衡の性質を解明するとともに、新しい入札制度の設計可能性を探るものである。複数の分割不可能な財を、入札を用いて多数の買い手に配分する問題を考える。このとき、買い手が個別の財だけでなく、任意の財の組み合わせ(パッケージ)を指定して入札できるルールを特に「組み合わせオークション」あるいは「パッケージオークション」と呼ぶ。本年度の研究では、特定の戦略の組が均衡となるようなオークションルールの特徴づけを行い、複数財オークションの基礎理論に新たな知見を与えたほか、価格せり上げ方式のオークションルールの下での入札者の戦略的行動の性質について分析した。本年度の主たる成果は以下のとおりである。1.組み合わせオークションにおいて、特定の戦略組がナッシュ均衡となる必要十分条件を導出し、ほとんどの既存の封印入札型の組み合わせオークションに共通の均衡が存在することを証明した論文“Vickrey-reserve auctions and an equilibrium equivalence”を執筆し、Mathematical Social Sciences誌に掲載された。2.多くの現実のオークションで採用されている「価格せり上げ方式」のルールを採用した組み合わせオークションにおける部分ゲーム完全均衡の分析を行った論文“The Vickrey-Target Strategy and the Core in Ascending Combinatorial Auctions”を執筆した。本論文は価格せり上げ方式が均衡において必ずしも望ましい配分を達成するとは限らないことを指摘した。本論文は複数の国際学会で報告し、現在国際学術雑誌への投稿準備中である。
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