【目的】本研究は、保育と教育の統合政策の先行事例として、スウェーデンの就学前クラスに着目し、幼小移行期における学習の実践様式を検討するとともに、統合政策の現状と影響に関する現地調査を行うことを目的としていた。 【具体的内容】調査時期は、平成23年11月27日~12月7日であった。ストックホルム大学のIngrid Engdah1博士の協力のもと、学校改革と就学前学校ナショナルカリキュラムの改訂に関する教員の意識調査のために質問紙を作成し、ストックホルム市及びヨーテボリ市の就学前学校教員へ配布した。また、Brikagardens forskola、Bjornligans forskola、Karlbergsskolan fritidhem、Valvets forskola、Engelska Skolan Norr AB forskoleklass、Lila Varldens forskola、Soderholmsskolan forskoleklassの計7施設を訪問し、実践を観察するとともに、教員へのインタビューを行った。 【重要性と意義】今回の調査においては、学校改革の施行直後の時期に、現地を訪れ、公立・私立双方の施設を訪問したうえで、就学前学校教員資格者・基礎学校低学年教員資格者、両者に対し、就学前クラスの学習に関する考え方や具体的な取り組みについての意見を聞き取ることができた点が大きな成果である。 また、新学校法や就学前ナショナルカリキュラムの改訂などにみられる改革の内容について、Ingrid博士や現場の教員らと意見交換を行うなかで、政策が先行しているスウェーデンの人々には気づきにくい統合政策の功罪への理解を深められた点は、非常に意義深いと考える。 これらにより、スウェーデンの保育・教育制度を別側面から照射し、これから統合政策を進める日本において、今後の幼小接続や移行に関する方向性や新たな視点を提示できた点は重要であろう。
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