発達障害のある聴覚障害児の言語的課題に対し、発達障害的な認知特徴に配慮しながら継続的な支援を行った。本研究では10事例に継続介入したが、ここでは1事例について報告する。LD及びADHD傾向の見られるa児(通常小学校6年生)は、人工内耳を装用しコミュニケーション手段は音声である。指導開始時にPVT-R(語彙年齢9:9、SS6)、J.COSS(通過項目数14/20)、質問-応答検査(対象年齢外:「系列絵」12、以外は20以上)を実施した6a児のような人工内耳装用でLD・ADHDを併せ持つタイプの場合、語彙拡充、単語の多義的理解が特徴的な課題であった。また相手を意識した叙述にも課題が見られた。保護者の願いも鑑み、語彙の拡充、談話(相手に伝わりやすい説明)をねらいとした。その際、集中の持続困難、難しい課題への学習意欲低下が見られた為、簡単な課題を導入として取り組む、一つの課題時間を短く設定する、休憩時間を設けることで学習への取り組みをサポートした。語彙拡充については、辞書の使い方、未知単語の意味を前後の文脈から予測すること等を指導した。50音表を確認することでスムーズに辞書を引けるようになり、また電子辞書も活用することで普段から自ら意味を調べる様子が見られるようになった。意味を推測することで、知らない単語に対しても諦めずに文章を読む態度が付き、文章全体の意図をつかみ易くなったこと、単語の意味を多義的に捉えることが観察された。談話については、4コマ漫画や状況絵の説明、絵を見ていない相手に説明して絵を描かせる課題等を行った。うまくいかないと落ち込んでしまい学習に取り組めなくなる様子、説明が冗長になる様子が見られた為、定型文を提示し穴埋め形式で説明するよう支援した。徐々に定型文構造の複雑化、定型文なしでも説明できるようになっていった。指導終了時、PVT-R(語彙年齢10:4、SS7)、J.COSS(通過項目数10/20)、質問-応答検査(「課程」21→24)と成績上昇がみられた。
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