研究課題
本年度も,研究実施計画に従い,「国際家族法における個人の文化的アイデンティティ」に関する研究を行った。個人のアイデンティティ及び法多元主義について検討する際には,特に文化人類学の成果から有益な示唆を得た。それを踏まえて準拠法の決定基準について考察したところ,真に個人のアイデンティティを実現するには,当事者に本国法又は常居所地法のいずれかを選択させるのが相当であること,準拠法選択がない場合には,欧州各国では常居所地法主義に移行する傾向が顕著であるが(ローマIII規則,相続規則ほか),日本では,現在でも国籍が個人のアイデンティティと一致することが多く,身分登録にも反映されていることから,原則として本国法主義を維持すべきであると考えるに至った。また,多文化主義の観点から国際私法における公序と人権規範について考察した結果,欧州各国は個人の文化的アイデンティティを尊重して公序の発動を控える傾向があるが,それによって現実には女性や子の権利に十分に配慮しない外国法が適用され問題が多いこと,人権規範を公序の枠内だけではなく,直接実現する手法を探求すべきことが結論付けられ,日本における公序則の運用にも重要な示唆を得ることができた。以上の成果をもって,本研究の目的は達成されたといえる。学際的研究を踏まえ,日本及びアジアの視点から,国際家族法における個人の文化的アイデンティティをめぐる議論を批判的に考察した研究は,国内外において例がなく,重要な意義があると解される。本研究の具体的成果は,すでに複数の論稿として公表されたほか,他の論稿の公表も予定されている。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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