本研究は、生物多様性を教育できる人間を育てるため、地域の生物多様性調査の基盤の上で、生物多様性を学び伝えるカリキュラム、また、それらを効果的に支援するためのICT教材を開発することを目的として行った。その実現に向け、研究実施計画では4つのテーマを掲げて進めた。以下、各テーマとそれぞれの実績を記す。 1)生物多様性調査・・・実地調査では、植物と爬虫類と哺乳類について行った。植物では、タンポポ類を中心とした草本植物についての調査を行い、工事履歴や植生管理法が種構成に大きな影響を与えていることを明らかにした。爬虫類では大分市郊外において多様性調査を行い、有鱗目の潜在的自然分布種の全11種、うち絶滅危惧種2種を記録した。哺乳類では、大分市郊外で調査し、希少種のアナグマ、外来種のアライグマなどを含む11種を記録した。 2)生物多様性学習カリキュラムの開発・・・研究代表者が大分大学で担当する講義・実習において、前年度の成果・課題を踏まえて、水辺環境、土壌環境、森林環境委、干潟環境の生物多様性の学習を実践的に開発した。また、生物多様性を記録・保存するための標本作成技術習得のカリキュラムも実施した。 3)生物多様性学習におけるICT教材の研究・・・大分県の生物多様性データベース構築に向け、県内の団体・個人が管理する情報の収集を行い、哺乳類、爬虫類、昆虫類、植物類に関して一定の成果を得ることができた。 4)教育効果の測定・成果の普及・・・上記の環境教育カリキュラムの実施前後にアンケート調査を行い、受講した学生の生物多様性に関する関心・知識・技術の成長の測定、カリキュラムの改善点などを分析し、本研究全体の成果と課題の抽出を行った。また、本研究の学会発表や論文化による成果普及、現職教員に対しての研修等において本成果の活用した。
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