本研究は、小中一貫教育に取り組む学校において、既存の「小学校文化」と「中学校文化」とが誰にとって、どのように、小中一貫教育の実践にとって障壁となっているのか、そしてそれをどのように克服しようとしているのかを明らかにすることを目的とした。そのため、平成24年度は前年度に引き続き、以下の3点を中心に研究をすすめた。 1.「小学校文化」と「中学校文化」との相違に関して、学校経営、教育課程、生徒指導、学校の施設・設備等の側面から理論的に検討した。また、「文化」や子どもの成長や発達に関する理論的検討を行い、小・中学校文化の相違と克服の難しさの根本にある概念を把握した。さらに、連携型で小中一貫教育に取り組む自治体の小中学校に対する質問紙調査の結果から、小中学校間のさまざまな「差異」を明らかにした。 2.小中一貫教育に取り組む学校や教師が直面する、「小学校文化」と「中学校文化」の相克を明らかにするために、施設一体型小中一貫校美郷南学園(宮崎県東臼杵郡美郷町、南郷中学校・南郷小学校)において、授業場面や特別活動、学校行事、PTA総会等の参観および職員会議・職員研修の参与観察を行い、各種資料を収集した。また、小中一貫教育の全国的な動向の把握のため、小中一貫教育全国サミット(京都市)に参加したほか、施設一体型を中心に併設型や連携型も含めた、小中一貫教育に取り組む学校の公開研究会等に参加し、授業等を参観したり、基礎資料を収集したりした。さらに前年度に引き続き、宮崎大学教育文化学部附属学校園で開催された「総合的な学習の時間」に関する研究部会に参加し、参与観察を行った。 3.小中一貫教育推進のキーパーソンとして、美郷町・小林市教育委員会(教育長、指導主事)や学校長、教頭、教務主任のほか、今年度は、平成23年度に開校した美郷南学園の開設準備から携わってきた教職員計13名に対し、聴き取り調査を行った。
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