<概要> 当初の研究計画にもとづき,平成24年度は,文献調査およびインタビュー調査によって事例の蓄積を続けるとともに,事例横断的な分析による理論の構築に取り組んだ。 <蓄積した事例> (1) ソニー株式会社:非接触ICカード「FeliCa」(コンセプト変更あり),(2) 三菱電機株式会社:IH炊飯ジャー「本炭釜」(コンセプト変更なし),(3) 三菱電機株式会社:IH炊飯ジャー「蒸気レスIH」(コンセプト変更あり),(4) 株式会社イトーキ:オフィスチェア「Cassico」(コンセプト変更あり),(5) 象印マホービン株式会社:IH炊飯ジャー「極め羽釜」(コンセプト変更なし),(6) シャープ株式会社:IH炊飯ジャー「ヘルシオ炊飯器」(コンセプト変更あり),(7) 株式会社能率協会マネジメントセンター:若年次教育プログラム「シゴトレ」(コンセプト変更なし)。なお,(1)~(6)の製品開発事例は,ディスカッションペーパーまたは紀要論文として発表している。 <理論構築> これら7つの事例について,Daft and Weick(1984)の「解釈システムとしての組織モデル」にもとづいて検討した結果,以下の3点が明らかになった。第1に,製品コンセプトが変更される際には,コンセプトが一時的に不安定になっていた。第2に,製品コンセプトが不安定化するには何らかのきっかけがあり,そのきっかけは受動的に得る場合と,能動的に得る場合とがあることが示唆された。第3に,製品コンセプトが不安定な状況では,開発チームはそれまでとは異なる方法で情報収集を行うことが見出された。以上のことから,製品コンセプトの変更プロセスは,開発チームによる解釈モードの変更プロセスとしてモデル化できることが示唆された。なお,この結果は2013年6月に開催される組織学会研究発表大会で報告する予定である。
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