これまで十分明らかでなかった19世紀後半日本における地域エリートの学習歴とその変容過程について、教育史学の手法で検証することが目的であった。平成24年度は、昨年度に引き続き「正規」でない学習歴を歩んだ地域エリートの「不定型」で複雑な学習歴の実像とその変化過程について明らかにするために、史料調査と史料分析を行なった。 史料調査については、文官普通試験に合格した人物の学習歴について調査を進めた。昨年に引き続き山口県公文書館での調査を行なった。大正時代末期までの文官普通試験に関わる史料を収集した。収集した史料は、文官普通試験の制度構築に関わる史料、合格者の履歴、試験の出題問題、合格者の回答などであった。また、判任官任用史料の収集にも着手した。加えて本年度は鳥取県立文書館での調査も行い、こちらでも文官普通試験に合格した人物の学習歴の史料を大量に収集できた。 農村の地域指導者層の研究については、1890年前後の地域指導者層青年の上京遊学日記の分析を進めた。対象青年が各種学校で学びながら高度な専門教育を受けるための準備をし、最終的に私立専門学校を卒業するに至った複雑な学習過程を明らかにできた。その内容は近日中に公開する予定である。 また24年度においては、博士論文の公刊に向けた準備を進めた。加えて、学術雑誌に本研究課題の関連著作の書評を依頼され執筆する機会に恵まれ、先行研究の整理が進んだ。 本研究課題は本年度をもって終了するが、平成25年度より28年度にかけて科学研究費補助金(若手研究(B))を得ることができたので、さらに研究を推進させていきたい。
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