本研究の目的は、分権改革がもたらした学校教育へのインパクトを政策サイクルの観点に立ち、政策形成、実施、継続・終了段階それぞれに焦点をあてて包括的に明らかにすることにある。具体的には、福岡県及び同県内市町村を対象に、少人数教育政策の導入に関する要因分析を行う。分権改革は自治体の行動を制限していた規制を取り払い、政策選択の自由度を高めた。それではどのような条件を備えた自治体がそれを導入しているのか。そしてどのような効果があるのか。本研究は、分権改革が学校教育にもたらしたインパクトを実証的に明らかにするものである。 平成23年度はこの目的のために(1)少人数教育を実施している自治体の財政状況を調査し、(2)少人数教育政策を導入している福岡県内全自治体の議会の議事録やその他関連資料を収集し、政策導入のプロセスを明らかにした。 (1)については、財政比較分析表に記された各指標の数値を集め、導入自治体、非導入自治体間で比較をした。この結果、導入自治体の方が財政の健全度は高いことが判明し、政策選択の自由度は財政的な条件によって左右されていることが判明した。しかし導入自治体の中でも健全度の低い自治体が存在しており、なぜ導入しえたのか、別途調査の必要性があると考える。 (2)については、2000年代前半から革新政党を中心に少人数教育の必要性が指摘されていたがその影響は少なく、2000年代中ごろより新首長の誕生を契機に導入が進む自治体が一定数あることが判明した。一方、それらとは関係なく当該市町村近隣自治体の導入がきっかけとなった自治体もあることが判明した。もっともそれらとは関係ない自治体もあるため導入の力学について別途調査する必要性がある。
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