本研究の目的は、福岡県及び同県内市町村を対象に、少人数教育政策の導入に関する要因分析を行うことである。分権改革は自治体の行動を制限していた規制を取り払い、政策選択の自由度を高めた。それではどのような条件を備えた自治体がそれを導入しているのか。そしてどのような効果があるのか。本研究は、分権改革が学校教育にもたらしたインパクトを実証的に明らかにするものである。 平成24年度はこの目的のために①少人数教育を実施している各自治体の条例、規則の収集を行うとともに、②財政力の低い自治体での少人数学級政策導入要因を明らかにすべくインタビュー調査を行った。 ①については、福岡県内の教育事務所管内の市町村毎に条例、規則を整理してまとめた。少人数学級政策の導入は特定の教育事務所管内の市町村に偏っており、特定市町村での政策導入後、隣接する自治体で後を追うように同政策を実施していることが明らかになった。条例、規則の内容を分析したところ、例えば35人、30人と学級編制基準を設定する自治体と、全く設定しておらず状況に合わせようとする自治体とがあり、相対的に財政規模の大きい自治体において基準を明記する傾向が看取された。 ②については、特定の教育事務所管内の財政力の低い市町村へ依頼をし、首長、教育長、教育委員会職員等へのインタビュー調査を実施した。この結果、財政力が低い自治体では教育政策として教育の改善へ寄与することと同時に、自治体間競争の時代にあって自治体の魅力を高める手段として少人数学級政策を導入したことが判明した。また、少人数学級政策導入にあたっては市町村独自の教員雇用が必要となるが、採用した教員の質をいかに高めるかが課題となっていた。
|