経営者交代は経営者を規律付ける役割が期待される一方で、経営者の利益マネジメントを誘発する可能性も指摘されている。具体的には、退任直前の経営者は利益を増やす動機を有し、新任の経営者は利益を減らす動機を持つと言われる。そこで、本研究では経営者交代前後の利益マネジメントについて実証的に分析した。分析の結果、 (1)退任前経営者は利益増加型の実体的裁量行動を行うが会計的裁量行動は行わない (2)退任前経営者による利益増加型の実体的裁量行動は経営者自身の株式保有によって抑制される (3)新任経営者は強制的交代時に利益減少型の会計的裁量行動を行う (4)新任経営者による利益減少型の会計的裁量行動は企業の将来業績を改善させる、ことが示唆された。
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