本研究の目的は、「参加型文化」を継続的に実現しているコミュニティを調査し、そこで人々が生成する社会的なスキルとしてのメディア・リテラシーに焦点を当て、現代社会にふさわしいメディア・リテラシー教育のための学習環境モデルを構築することである。 昨年度は、「参加型文化」という視点から提案されている、米国のメディア・リテラシー教育の理論および実践について調査するとともに、日本の情報社会論の視点を取り入れ、日本においてはどのようなメディア・リテラシー教育を実現しうるかを明かにした。本年度は、このような昨年度の成果を踏まえ、メディア・リテラシー教育のための具体的な学習環境モデルの提案を行うことを目的とし、調査研究・実践研究を実施した。具体的には、水戸芸術館現代美術センターの教育プログラムとして実施されている、高校生対象のワークショップ・プログラムのフィールドワーク調査研究を行った。主に対象としたのは、①現代美術鑑賞を支援するワークショップ・プログラムおよび②高校生自身が自らメディアを創造し発信する写真作品の創作ワークショップである。これらの実践をエスノグラフィックな手法を用いて調査することにより、今後のメディア・リテラシー教育の学習環境デザインを考えていく際に、「ピア・グループ型ワークショップ」というモデルがひとつの有効なモデルとなりうることを明らかにした。 本年度はこれらの研究成果を踏まえ、中高生を中心とした若者に研究成果をアウトリーチするための情報提供サイト「DiY部」を制作した。本ウェブサイトには、若者がメディアを使って自らの声を発信するためのノウハウや具体的な実践レポートが掲載されている。このサイトを若者自らが活用することにより「ピア・グループ型ワークショップ」という学習環境デザインを、若者たち自身が創造していくことを期待したい。
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