研究概要 |
本研究の目的は、①教育思想研究をとおして「教育場面」再解釈の視座を構築すること。②「教育体験」のテクスト化を行う調査研究をとおして臨床教育(学)的方法論を確立すること。そして③生徒と教師の「交流・協働」に焦点化した授業開発を行うこと。この3つの段階を設定し、それぞれの研究の性質の相違に注意深く配慮しつつ複合的研究を行うことにより、「学校」と「教師」を支援することに焦点化した教育学研究の枠組みを構築することにあった。①の基礎研究の成果に関しては、Joy. A. Palmer ed., “Fifty Modern Thinkers-From Piaget to the Present”, (Routledge, 2001.)の翻訳作業に携わり、近代主義的教育(学)における「理論」と「実践」の乖離という主題を考察するための多様な視座を得るとともに、E.レヴィナスの思想研究を手がかりとした「教育場面」の再解釈に関する研究を日本教育学会で発表した。②の「教育体験」のテクスト化に関する調査研究に関しては、研究協力校において2年間にわたり調査を実施した。まず、生徒対象の調査研究については、生徒とともに体験的活動を行う過程で、生徒自身に「教育体験」を記述してもらった。また、教師対象の調査研究に関しては、研究協力校における教員研修会において、生徒の「声」を聴く場面を設定するとともに教師自身に「教育体験」を記述してもらった。この一連の調査から、教師個人の「教育体験」が生徒とのかかわりに与える影響について考察した。この調査の過程で、広岡義之編『教育実践に役立つ生徒指導・進路指導論』において、「学校における進路指導の新たな展開」部分を執筆し、今後のキャリア教育のあり方について論じた。そして、③に関しては、調査結果に基づき資料を作成したが、今後の授業開発を行う際の基礎資料を提供することに止まった。
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