BIS規制と銀行行動の関係を多角的に実証分析し、研究成果を国内外に公表することが本研究の目的であった。研究実施計画に基づき、本年度も3つの異なる銀行行動について分析を行ってきた。それぞれの研究実績は下記の通りである。 1.キャピタル・クランチに関する研究について 本研究は2012年11月に国外学会にて発表し、その後、当該学会のProceedingsとして掲載された。本研究の貢献は、先行研究が明らかにしてこなかったキャピタル・クランチ促進効果の存在を明らかにした点である。資本注入政策が抱える潜在的な負の影響を理解した上で、資本注入政策の執行方法、銀行監督の在り方に関する議論を深める必要性を主張している。 2.貸倒引当金積立行動に関する研究について 本研究は海外研究者との共同研究である為、年間を通じて月1回程度インターネットを用いた会議を行い、2012年9月には共同研究者の一人(豪州)を訪ね、集中的に共同研究を行う期間も設けた。研究の過程で、平成23年度より追加的に取り組み始めた研究(公的資金注入政策が銀行の人事行動に与えた影響に関する研究)を、共同研究の中心に据えることになった。当該研究は本年度中に初稿を完成させ、2013年3月に国外学会にて発表した。本研究の貢献は、公的資金注入は銀行の人事行動(人員削減や新規雇用など)に影響を与えたことを示し、その分析を通じて日本の労働市場の硬直性を示した点である。 3.現金・準備預金保有行動に関する研究について 本研究は2013年1月に国外学会にて発表し、その後、当該学会のProceedingsとして掲載された。また、学会ではBest Paperの1つとして表彰された。本研究の貢献は、邦銀の現金・準備預金保有行動が自己資本比率(特にTier 1比率)と関係している点を明らかにし、それが金融政策の波及メカニズムに影響を与えていた可能性を指摘した点である.
|