研究課題/領域番号 |
23830073
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
古市 将人 帝京大学, 経済学部, 助教 (50611521)
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キーワード | 普遍主義的福祉 / 地方財政 / 地方税 / 政府間財政関係論 / 財政調整制度 / スウェーデン / 国際比較 / 税平衡交付金 |
研究概要 |
平成23年度において、大きく2つの作業に着手した。第1に、スウェーデンの1970~1980年代における財政調整制度の改正と財政再建の関係を研究し、日本財政学会にて報告をした。第2に、2012年2月末から3月末にかけて、スウェーデン・ストックホルムにて本研究に必要な資料を収集した。スウェーデン公文書館にて、研究に必要な一次資料を収集できた。次に、学会報告の成果を整理する。 スウェーデンにおいて実施された90年代の大規模な財政再建以前の,70年代から80年代の財政再建政策について、研究代表者は分析をした。80年代において、スウェーデンの中央政府には、1)財政再建期であるため自治体の支出抑制を図る、2)移転財源は増加させずに自治体の標準的支出は保障する、といった制限が課された。そこで、80年代に中央政府が選んだのは、自治体の財政需要を考慮することで交付金総額の配分を調整する措置であった。 1990年代初頭のバブル経済崩壊によって、スウェーデンは巨額の財政赤字を抱えることになった。そのため、当時の連立政権は財政再建策を実施した。それは、財政移転額を大幅に削減した上で、新たな財政調整制度を導入するものであった。そこでは自治体の個別事情を捕捉する新しい仕組みが導入された。それこそが、自治体の社会構造、年齢構造、人口密度、気候条件で構成される構造的費用を平準化する仕組みであった。自治体の個別事情を捕捉する手法に関して、80年代と90年代は連続している。つまり、80年代以降起きたのは、自治体経費を抑制し、地方税の増税をさせずに、地方政府の財源を保障する中央政府の試みであったのである。「福祉国家の縮減期」において、スウェーデンの普遍主義的福祉を財源面で支えたのが、幾度かの改正を経た財政調整制度だったのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を遂行する上で必要な資料を収集したことに関していえば、本年度は当初の研究計画に沿って進んでいると評価できる。さらに、資料収集に留まらず、研究成果の一部を学会にて報告できた。そのため、歴史的分析の部分については、当初の計画通りに研究が進んでいる。しかしながら、研究のもう一つの軸である計量分析の部分については、当初の予定より遅れている。主に、データの収集・加工の作業が遅れている。遅延の理由として、歴史的分析に必要な資料収集と学会報告の準備・発表に多くの時間を割いたことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、収集した一次資料の精読に力を注ぐ。その研究の過程で、新たな資料収集が必要だと判明した場合には、夏季休暇を利用して再度資料集を行う。スウェーデンの財政調整制度をめぐる研究については、平成24年度中の査読誌への投稿を行う。また、計量分析についても、24年度中の査読誌への投稿を行うことを予定している。
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