本年度の成果を(1)スウェーデン財政(2)国際比較・計量分析(3)資料収集に即して記述する。 (1)本年度では、初年度に行った学会報告・資料収集の成果を踏まえて、スウェーデンにおける1966年の財政調整制度の形成過程を分析した論文を『地方財政』に投稿し、出版した。当初の課題の一つである1970~80年代の財政調整制度の改正を分析するための、歴史的文脈を明らかにした。「強い地方自治」を体現するとされるスウェーデンにおいて、強力な地方比例所得税ゆえの税率格差の問題に自治体が悩まされ、それを克服するための制度として税平衡交付金制度が導入された。交付金制度が具体的な自治体財政需要を算定する仕組みを持たなかった経緯を追跡し、80年代に創設される制度の原型が政策立案時に検討されいたことを指摘した。むしろ、中央政府の財源制約下において、中央政府から自治体への負担転嫁、自治体間の負担調整策の一環として交付金制度に財政需要勘案部分が導入されたといえる。 また、現代のスウェーデンにおける福祉財政の実態を論じた論文(ブック・チャプター、未刊行)を執筆した。そこではスウェーデンの福祉を支える地方財政と政府間財政関係の重要性を指摘した。 (2)近年、OECDのFiscal decentralization databaseが改訂されたため、地方分権の指標を作成するのに必要な基礎的なデータ収集を行い、本格的な分析に必要な予備的分析を行った。 (3)2013年3月にスウェーデン・ストックホルムにて資料収集を行った。戦後の自治体財政を対象とした統計的分析が不足しているため、国会図書館、ストックホルム大学、統計局等で自治体データを収集した。現在、戦後からの自治体パネルデータを構築している。
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