本研究では、国際金融情勢に大きな影響を受ける小国はいかなるプルーデンス政策(金融システム安定化政策)を実施すべきか、その政策設計の指針を示そうとした。その際、ともに急速な経済成長を遂げた後に深刻な通貨金融危機に直面したタイ(1997年に危機発生)とアイスランド(2008年に危機発生)の比較研究を実施した。両国の経済金融統計資料、詳細な公式調査報告書、そして金融関係者へのインタビューを通じて、両国の金融当局者は成長通貨としての海外資金導入を重視するあまり、厳しい事前的なプルーデンス政策の必要性を理解しながらも実施できなかったことを示した。また、両国の事後的なプルーデンス政策(預金保険や最後の貸し手)を掘り下げるなかで、その制度設計に際して国際的な政策協調、とりわけ近隣諸国とのそれの重要性が浮き彫りとなった。以上より、小国のプルーデンス政策設計の指針としては、一国のみで最適な政策設計をめざすのではなく、国際的な政策協調を重要視してとりわけ事後的なそれの政策設計を早急に整備する必要があるとの結論に至った。
|