研究課題/領域番号 |
23830076
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
辻 智子 東海大学, 課程資格教育センター, 講師 (20609375)
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キーワード | 青年 / 青年集団 / 地域社会 / 地域共同体 / 東日本大震災 / アクションリサーチ / 記録 / 生活記録 |
研究概要 |
本研究の主たる目的は、東日本大震災に直面した地域社会の変容・地域共同体の再編の経過をそこに暮らす青年の視点からとらえ、その過程における<青年個人/地域青年集団/地域を越えた青年集団のネットワーク>の足跡を記録するとともに、地域社会にとって、および現代日本の青年たちにとって地域青年集団が果たす役割とその意味を考察することにあった。 本年度の取り組みにおいて最も重要であったことは、まずとにかく災害直後の状況を現在進行形で記録し残すことであったが、ヒアリング調査等を通して計画以上の進展を遂げ、2011年3月、すでに1冊の記録冊子としてまとめることができた。そこには、岩手県大槌町、陸前高田市、宮城県栗原市、気仙沼市、登米市、福島県会津若松市、浪江町、および石川県、大阪府、岡山県の青年・青年集団の歩みが収められている。 とりわけ注目されることは、ヒアリング調査等を契機としつつも、青年たち自身が自分の言葉で自身の記録を綴るに至った点にある。ここには、一人ひとりの青年が、単なる調査の受け身の「対象者」であることを越えて、自らが自らの経験を整理し、意味づけ、発信していく主体となってゆく姿が見て取れる。このことは、本研究の方法における特色として挙げた参加型アクション・リサーチの一形態としてとらえることができる。 以上のように、本年度の取り組みを通して、被災地/間接的な被災地において地域に生きる青年たちが東日本大震災をどのように経験し、どのように生きぬき、さらに今後をどのように展望していこうとしているのか、が具体的に立ち現われ、それを本人含むより多くの青年たちと共有することができた。同時に、そこにおける青年集団や地域を越えたネットワークの意味についても、それを分析・考察する多くの手がかりを示してくれ、調査者にとっては得るものの多い一年となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
東日本大震災直前・直後の状況を青年の視点から現在進行形で記録し残すという主たる研究目的については当初の予定以上の成果を達成することができた。当初は、平成23~24年度の2年間分をまとめて最後に記録化する予定だったが、ヒアリング調査等が当初の予定以上に進展したため、平成23年度の1年間分のみでの記録化を果たすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度も引き続き、継続的なヒアリング調査等の記録化の作業をすすめる。その際、これまでの協力者の範囲をやや広げ、より多様な立場と状況の青年たちからの声も聴いてゆきたい。そのためにも、平成23年度において作成することができた記録冊子を活用し、これを多くの人に読んでもらいながら感想や意見を集めるとともに、一つの先駆的取り組みとして提示し、これに続くものへの青年たちの参画を促しながら発展的に展開してゆきたい。また、青年たちが暮らす地域社会それ自体に関する、客観的なデータ収集や、歴史的資料、震災直前・直後の状況、震災後1年を経た時点の状況などを拾い上げ整理していく作業も進めてゆきたい。(研究計画の変更や研究遂行上の問題点は特にない)
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