本研究の主たる目的は、東日本大震災に直面した地域社会の変容、地域共同体の再編の経過をそこに暮らす青年の視点からとらえ、その過程における<青年個人/地域青年集団/地域を越えた青年集団のネットワーク>の足跡を記録するとともに、地域社会にとって、および現代日本の青年たちにとって地域青年集団が果たす役割とその意味を考察することにあった。 昨年度に引き続き本年度の取り組みにおいても、災害直後の状況を現在進行形に近い形で記録し残すことは重要な点であったが、この点については、昨年度の調査協力者のつながりから新たな協力者を得ることができ、昨年度は触れることのできなかった地域や異なる状況からの記録を収集することができた。具体的には、北海道様似町、青森県八戸市、宮城県角田市、福島県伊達市・いわき市、さらに静岡県静岡市の青年の東京での経験などである。 また、今年度は、東日本大震災直後の経験のみならず、その後1~2年を経過した地域と青年の暮らしの現実についても話を聞き記録にとどめることができた。さらに、昨年度のヒアリング等の記録紙への感想から語り手・書き手と聴き手・読み手との相互交流を生み出すことができたこと、またそれを踏まえた内容も今年度作成の記録紙のなかに収めることができたことは収穫であった。 さらに、歴史記録の収集として今年度は岩手県陸前高田市について、先行研究の収集・整理に着手し陸前高田市青年団体協議会の三十周年史を発見することができた。また地方新聞『東海新報』バックナンバーの閲覧によって陸前高田市青協の1990年代~2011年までの歩みの一端をたどることができた。この成果の一部は、日本社会教育学会研究大会(2012年10月、北海道教育大学釧路校)において報告(自由研究発表)するとともに、陸前高田市青協に資料(複写)と研究報告(レジュメ・資料)を寄贈することができた。
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