研究課題/領域番号 |
23830077
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
針原 素子 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (80615667)
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キーワード | 社会系心理学 / 比較文化 / ネットワーク / 一般的信頼 |
研究概要 |
本研究では、これまで、自身の研究により明らかにしてきた「アメリカ人、韓国人と比べて、見知らぬ他者に肯定的態度を持たず、関わりを持たない日本人」について、なぜそのような文化差が見られるのかを検討することを目的としている。人々のつながりの重要性を示す社会関係資本の文化差については、従来、個人主義的な文化のほうが、人々が見知らぬ人も含めた一般的他者をより信頼し、寛容であり、より多くの社会関係資本を持つとされてきたが、この日韓米の文化差については説明することが難しい。そこで、本研究では、1つには、日本人のネットワーク構造が、家族、友人、職場といった領域を横断するつながりがない、boundary densityが低いネットワークであること、もう1つには、見知らぬ他者とは関わらないという周囲の慣習が均衡として存在することが原因ではないか、との仮説を検討する。 本年度は、1つめの仮説を検証するため、東京都、埼玉県、群馬県在住の25歳~59歳の男女計678名を対象にインターネット調査を行った。人々のネットワークのboundary densityを計算するため、家族、親戚、仕事上のつきあい、友人、近所づきあいという異なる領域の中から、それぞれ最もよく話をしたり親しいと感じたりする人を一人ず1つ挙げてもらい、それらの人々が互いに知り合いかどうかを全ての組み合わせについて尋ねた。その結果、仮説通り、異なる領域の知人同士につながりのないboundary densityが低いネットワークを持つ人ほど、一般的信頼が低く、見知らぬ他者には話しかけないことが分かった。この結果は、24年度Society for Personality and Social Psychology年次大会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、web上での日韓米ネットワーク調査は次年度に予定していたが、日本人を対象とするデータ収集を完了することができた。そのため、おおむね順調に進展していると考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、日本国内で行った調査により、少なくとも日本国内では、ネットワークのboundary densityが人々の見知らぬ他者への態度に影響していることが確かめられた。そこで、今後、韓国、アメリカにおいてネットワーク調査を行い、文化の間に見られる態度の差が、boundary densityの違いに媒介されているかどうかを検討する。当初、大学生を対象とした調査を行う予定であったが、大学生のネットワークには偏りがある可能性を考え、一般人を対象に調査を行う予定である。そのため、質問数を絞り込み、予算をネットワーク調査に重点的に振り分けるなどの対応策を講じる。また、見知らぬ他者とは関わらないという慣習の影響について、日本人大学生を対象に質問紙調査を行い、検討する。
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