本年度の研究計画では、警察統計にもとづき、明治大正期の府県別第三次産業人口を推計する予定であったが、マイクロフィッシュから必要な表を電子化する作業に予想以上の時間を要したため、年度内に推計を完成させることはできなかった(2013年7月完成予定)。 しかし、前年度推計した明治大正期の府県別有業者数および第一次産業人口にもとづいて、1890年の府県別産業別有業人口を再推計し、他の研究者とともに執筆した戦前期日本の地域間格差にかんする論文(Bassino et al. [2010] "Regional Inequality and Industrial Structures in Pre-War Japan" Hi-Stat DP series No.138)を改訂した。その結果、推計の最初の年次である1890年の地域間格差は、以前の推計よりも若干縮小することになった。 また、上記の推計結果と、研究代表者による戦前期の府県間人口移動推計を組み合わせ、人口移動と府県間格差の関係を分析した。その結果、戦前期に見られた地域間格差の縮小傾向は、貧しい府県から豊かな府県へ人口移動によってもたらされた可能性が示唆され、この暫定的な結論は、2012年9月に一橋大学で開催されたAsian Historical Economics Conference(AHEC)で論文共著者により報告された(報告タイトル"Regional Inequality and Migration in Prewar Japan 1890-1940")。 一方、府県別推計のコントロールトータルとなる全国レベルの第三次産業所得推計についてもサーベイを実施し、前述のAHECで報告した(報告タイトル"How to shed light on the black box")。
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