前年度に引き続き、「顕示選好理論による所得効果の推定」という研究題目の下、研究に取り組んだ。当該研究は、消費者の所得変化がその需要行動にもたらす影響を、観察された価格・消費データから推定するための方法論に関するものである。本研究が立脚する顕示選好理論は、理論上の仮説・仮定について、観察可能なデータからその妥当性を検証する際に有効なツールである。そこで本研究では応用研究でしばしば課される、需要の所得単調性について検証する方法の構築を進めてきた。 24年度においては23年度までに得られた成果をさらに発展させ、特に実証データによる分析がより容易となるような形に定理を書き換えること、および実際にデータ分析を行ってみることに重点をおいた。そしてそれらの結果について論文としてまとめ、国内外の学会・セミナーにおいて報告を行った。国内学会としては北海道大学にて開催された日本経済学会春季大会であり、国際学会としてはQueensland大学で開催された、12th SAET Conferenceである。特に後者においてはsession organizer及びsession chairも務め、同分野の研究者との意見交換を積極的に行うことができた。 その後、両学会で得られたコメントをもとに論文の改訂をすすめ早稲田大学ならびに上智大学におけるセミナー報告を行ない、さらなる論文の改善をはかった。研究課題自体は25年度以降も日本学術振興会特別研究員として継続する計画であり、24年度までに得られた成果は25年度前半には国際ジャーナルに投稿可能な状態である。
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