本研究は、候補者との間に利害関係を持つ審査員達(ただしその利害関係は客観的には明らかでない)によって審査団が構成されたコンテストにおいて、コンテストの趣旨に照らし合わせて最良のランキングが自発的に選ばれるような審査団内の意思決定の方法(=メカニズム)として、"各ランキーングについて上から順番に、それぞれの候補者がそのランキングにふさわしいか否か審査員達が逐次的に回答していく"という持ち回り決裁型メカニズムの有効性を分析するものである。本年度はこのメカニズムが有効に機能するための理論的な条件と、従来提案されてきたメカニズムと比較した時の特色について研究し論文にまとめ、下記の学会で報告を行った。それらの参加者及び討論者のアドバイスから、本メカニズムの派生形として"特定の審査員の回答が拒否権的な効力を持つということなく、全審査員の逐次的回答の多数決によって候補者を選ぶ"というより不公平感の少ないメカニズムのアイデアが得られた。このメカニズムについては、更なる研究を通じてその有効範囲の理論的な特徴づけを行うとともに、不公平感の縮小という心理的なメリットに留まらず、ゲームに関する共通知識について弱い仮定を課した場合でも望ましいランキングが選ばれるという意味で、均衡の頑健性を向上させるメリットがあることも明らかにした。実験による検証については、実験昌的及び実験で用いるモデルの確定、上述したメカニズムの派生形が実験結果に与える影響の考察など基本的な実験デザインを完了し、次年度の本実験に向けた準備を行った。
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