研究概要 |
申請者は,機能的磁気共鳴画像法(functional Magnetic Resonance Imaging:以下fMRI)を用いて,うつ病における将来予測の障害とその神経メカニズムを明らかにすることを研究課題とした。今年度は,遅延割引課題を用いて,将来予測中の健常者の脳活動の解析を行った。これまで,31名の健常者を対象としたfMRI実験のデータ収集が終了しており,これらのデータの解析を行った。現在行っている解析結果から,報酬における遅延割引はこれまで先行研究で指摘されている神経基盤が関連することが確認できた。一方で,損失における遅延割引については,先行研究とは異なる結果が得られており,現在結果の精査を行っている。 うつ病患者を対象としたfMRI実験に関しては,15例のデータ収集が終了した(行動実験は21名のデータが得られた)。患者のデータについては,現在もデータ収集を継続している。データ収集終了後には,うつ病患者と健常対照者との脳機能を比較して,うつ病における将来報酬予測の障害に関わる脳内メカニズムを検討することを予定している。なお,今年度は脳機能画像解析に先立って,これまで得られた21名のうつ病患者の行動データを解析した。一般的に損失における遅延割引はあまり生じないが,うつ病患者においては,損失における遅延割引が生じていることが明らかになった。また,集団認知行動療法の前後で比較を行うと,治療前よりも治療後の方が損失に対する遅延割引が和らいでいることが明らかとなった。来年度は,これらの解析に加えて,患者のfMRIデータの解析を行うことを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者のデータ解析において,さらなる解析が必要となり,当初の予定よりも時間がかかっている。一方で,うつ病患者のデータ収集に関しては,当初の計画よりも進んでいる。
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