研究課題
申請者は,機能的磁気共鳴画像法(functional Magnetic Resonance Imaging: 以下fMRI)を用いて,うつ病における将来予測の障害とその神経メカニズムを明らかにすることを研究課題とした。前年度から実施している遅延割引課題を用いて,将来予測中の健常者の脳活動の解析を行った。31名の健常者を対象としたfMRI実験のデータ収集が終了しており,これらのデータ解析から,報酬における遅延割引はこれまで先行研究で指摘されている神経基盤と関連することが確認できた。一方で,損失における遅延割引については,先行研究とは異なる結果が得られており,昨年に引き続いて,現在も結果の精査を行っている。うつ病患者を対象としたfMRI実験に関しては,23例のデータを収集し目標症例数に達したためデータ収集を終了した(行動実験は29名のデータが得られた)。患者のデータ収集が終了し,健常対照者についてもデータ収集が本年度終了した。脳機能画像解析に先立って,うつ病患者における遅延割引課題の行動データを解析した。一般的に損失において遅延割引はあまり生じないが,うつ病患者においては,損失における遅延割引が生じていることが明らかになった。また,集団認知行動療法の前後で比較を行うと,治療前よりも治療後の方が損失に対する遅延割引が和らいでいることが明らかとなった。これらの解析に加えて,患者のfMRIデータの解析を行いプレリミナリーな結果を得た。即時報酬選択には中脳辺縁系(腹側線条体,PCC,MPFC),遅延報酬選択には外側皮質領域が関わるとされているが,集団認知行動療法により,損失予測時の線条体の活動が低下した。この結果は,中脳辺縁系の活動が抑えられることで,遅延割引が低下した可能性を示唆している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry
巻: 43 ページ: 1088-1094
DOI:10.1016/j.jbtep.2012.05.007