本研究は公立小中学校における教職員雇用について分権改革に先行する事例に独自の分析枠組み(前史的事例)を設定し再検証することを目的とするものである。 県費負担教職員制度は全国の教育水準の確保に重要な役割を果たしてきた。同制度に並立して2006年度に全国展開されたのが市町村費負担教職員制度である。この制度は2006年に全国展開されたものの、必ずしも全国的に広がっているとは言えない。なお、前史的事例の研究枠組みは県費負担教職員との並立状況を検討課題としていることから、非常勤ではなくフルタイムの教員雇用を表す枠組みである。 本研究では関東地方A町、関西地方B市における市町村費の教員雇用事例について関係者へのインタビュー調査、資料収集を行った。これらの自治体は非常勤講師の雇用によって自治体内の教育課題に対処していた。前述した通り非常勤講師雇用は前史的事例の研究枠組みには該当しないが、これら2市町がフルタイムではなくなぜ非常勤の雇用を選択したのか、その背景を探る対照事例として取り上げた。 このうち、A町では1999年度より町立中学校において数学と英語のティーム・ティーチング(TT)実施のため、町費により非常勤講師を配置した。この政策形成には町長の問題提起から、教育委員会事務局における政策形成、議会における政治的対立など様々な経緯があった。本研究ではこれらも調査・分析対象とした。B市では2005年度より専ら生徒指導に従事する教員(生徒指導専任教員)を配置してきた。この生徒指導専任教員の受け持つ授業負担を軽減するために、市費により非常勤講師を雇用したのである。B市についても、政策形成の経緯を中心に調査・分析の対象としている。 また、本研究では全国の市町村を対象としたアンケート調査も実施した。その集計・分析はまだ途上であるが、上記の事例調査との関連を踏まえつつ、引き続き研究成果を公表してゆく。
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