本研究の目的は、ナショナリズムと人種主義をめぐる現象について、近代日本社会とフィンランドを主たるフィールドに、比較・歴史社会学的考察を行うことであった。理論的には、A. ケミライネン、L. グリーンフェルド、N. エリアス等を主に参照した。1年目は、論文投稿(「『西洋』を媒介にしたナショナリズム」『椙山女学園大学研究論集』43号)・学会発表(「『文明』の所属承認をめぐる戦略――A. ケミライネンの研究を導きの糸に」日本社会学会第84回大会) などを行い、本研究の基礎を形成した。2年目である本年度は、1年目の成果をもとに、フィンランドへの資料収集(2012年8~9月、ユバスキュラ大学図書館等)、国際ワークショップでの発表(「The Paradox of Subjectivization: the Imagined West and Modern Japanese Intellectuals」A Japan- based Global Study of Racial Representations Intercultural Wrokshop Crossing Boundaries: Art and History Part II Crossing Boundaries in History京都大学人文科学研究所 共同研究「日本・アジアにおける差異の表象」主催、2012年10月)等を行った。ワークショップでは、比較の視点を交えつつ、近代日本の知識人の「西洋」表象に含まれるパラドクスについて英文ペーパーを用意し発表を行った。この成果は、現在、人文科学研究所の要旨集に要旨がおさめられているが、本論については、これから論文として投稿する予定である。本年度は、海外への資料収集、ワークショップでの発表などが研究の中心となった。これからは、研究成果をまとめあげる作業をさらに行っていきたい。
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