本研究は、第二次世界大戦をまたぐ1930年代から50年代の日本の国際観光政策について、組織体制、政策形成過程、国際情勢などの面から分析を加え、日本帝国崩壊後の対米国・東アジア関係の変化を、観光政策の視点から理解することを目指す。本年度は、前年度に収集した占領期の資料群をもとに、外国人観光客に対するGHQの渡航管理政策と日本政府・観光関連団体の対応を分析した。 本年度の研究成果は以下の四点である。①前年度の発表を踏まえ、ファシズム期の日本とドイツの観光事業について、組織体制、資金源、法制度などの面から比較した論文を執筆した。②台湾先住民を対象とする「内地観光」事業を事例に、植民地教育の一環として実施された訪日観光旅行の実態と参加者の感想記録を分析し、日本社会学会で報告した。③占領期に進められた外国人の訪日旅行(商用、観光、家族・友人訪問)に対する規制緩和について、その政策実態とそこに込められたGHQ及び日本政府・観光関連団体の意図を分析し、関東社会学会で発表した。またその過程で、極東委員会での審議内容を分析した結果、占領期の国際旅行問題に関しては、外国人のインバウンド旅行よりも、日本人のアウトバウンド旅行が、極東委員会の参加構成国を二分するほどの大きな争点を形づくっていたという知見を得た。そこで新たに、④日本人の海外渡航に対するGHQの政策動向と極東委員会での論争点を整理し、③で整理したインバウンド旅行の政策展開とあわせて、占領期の国際旅行政策に関する論文を執筆した。
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