本研究の目的は、財務諸表監査の主たる目的ではなく、副次的な目的として捉えられている不正の発見または摘発に焦点を当てることで、財務諸表監査へ不正摘発型監査を取り入れた監査を提案するとともに、そのような監査における課題を明らかにすることである。具体的には、従来の監査ではあまり取り入れられてこなかった不正調査の方法を取り入れることや、財務諸表の重要な虚偽の表示は自然に発生するものではなく、人間が意図的に行うものであるとの認識のもと、心理学や犯罪心理学等の学問領域の考え方を応用すること、また、いわゆるホワイトカラー犯罪の特質を明らかにすることを通じて、新たな監査技術と監査意識の提唱を試みるものである。 上記の目的を達成するために、本年度は、過年度に引き続き国内外の文献を基に研究を進め、監査人が不正を発見または摘発するために有効および利用可能と考えられる新たな監査技術や監査意識の提唱を目指し、実際の監査においてそれらが有効および利用可能かについて検証するために、アンケート調査の実施を予定していた。 しかし、本研究の期間中である平成24年5月に、従来の監査基準とは別の独立した基準として、不正対応に関する基準を新たに設ける方針が金融庁によって示された。本研究に直接関係する部分であり、新基準を踏まえた研究・調査が必要不可欠となった。そのため、当初予定していたアンケートの完成に至らず、アンケート調査を実施することが出来なかった。 今後は、これまで得られた研究成果を基に、改訂された監査基準や不正に関する監査基準の実務への影響等を踏まえ、論文として研究をまとめていく予定である。
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