本年度は、前年度の文献調査をふまえて、①全国市区町村アンケート調査、②名古屋市全保育所(認可・認可外)アンケート調査及びヒアリング調査、③英国訪問調査、④わが国に必要な対策を考察、⑤研究報告書の作成、の5点を計画していた。 計画のうち、①③は準備不足のため実施できなかった。②のうち、認可保育所のすべての保護者を対象にしてアンケート調査を実施した。回収率は低いものの、1万人を超える回答が得られた。 本調査結果から、保護者の年収構造を基軸にして、育児や育児観、保護者による保育所への構え、社会的排除などの相関分析を行った。また、社会的排除や虐待につながる恐れのある家庭と他の因子とがどのような関係にあるのかについても今後分析する予定である。さらに、ひとり親家庭からの回答も多かったため、ひとり親家庭特有の生活・育児困難があるのかどうか分析することも計画している。先行研究及び本調査結果の分析・考察を通して、保育所における「子どもの貧困」問題を構造化する。 保育所における「子どもの貧困」問題の構造化をふまえて、④にあるとおり、現在進められている子ども・子育て新制度の制度設計が、保育所を利用し子育てする家庭に適合しうるのかどうか検討する。なお、新制度の最大の課題は待機児の解消である。本調査は日本一待機児の多い名古屋市で行った調査であるため、その点の研究効果があると考える。 ⑤にあるとおり、2年間の研究成果を報告書にまとめるとともに、出版を計画する。
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