本研究では、措置入院経験のある精神障害者の方々に、当時の状況についてのインタビュー調査を行い、ライフヒストリー研究の手法を用いて分析を行った。本研究の目的は、指針障害者がその障害に伴う症状によって、本人の意図に反していわゆる触法行為と呼ばれる行動を取るに至る状況を、彼らを取り巻く社会的要因という点から明らかにすることであった。 本研究は、精神障害をもつ人々にとって特に重要と思われる体験について尋ねるものであり、その精神的な面での侵襲の可能性も懸念されたため、その実施には万全の対策を期し、方法についても申請者が所属する研究機関が設置する倫理審査委員会における審査を受け、承認を得た上で行われた。 調査は9名の調査対象者に対して実施された。これらの調査を通じて次のような点が示唆された。まず、精神障害をもつ人々が触法行為に至る大きな要因の一つとして、医療・服薬の中断があるという点である。この点については、これまでの先行研究や実践からの声のなかでも度々指摘されてきた点であり、それが触法行為につながる一つの入り口であると考えられた。次に、なぜそのような中断が起きるのか、という点については、①精神疾患についての無理解、②精神疾患に対する拒絶的反応、③社会的役割(就労や家族のなかでの役割)への執着といった点が指摘された。 これらの結果については、報告書を作成し、関連機関等への配布を行うと同時に、調査対象者のなかで希望する者へ配布した。また、今後は追加的なインタビューを継続して行う予定としており、それらの経過を踏まえて、適宜学会発表等を行っていく予定である。
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