本年度の研究課題として第一には、地方における女性首長の増加という現象が、家族主義福祉レジームの変容とどのように関連しているかについて検討した。女性首長のキャリアパスについて調査するとともに聞き取りを行った結果を日本選挙学会で報告した。 本年度第二の研究課題として、労働政策の政治過程について検討した。具体的には、ジェンダーに基づく労働市場の二重構造が、どのように変化あるいは維持されてきたのかを検討することを目的とし、パートタイム労働法の制定および改正過程に関する資料を収集し、政治過程の分析を行った。分析においては、次の点に注目した。すなわち、従来はコンセンサス型といわれてきた労働政策の決定過程が多数決型に移行したことによって、政治アクターが用いる政治的言説の中で有権者からの直接的な支持獲得を目的とする動員的言説の重要性が増加したこと、そのためにパートや非正規労働者と正規労働者の間の待遇格差の是正という従来は周辺化されてきた争点が政治アクターによって取り上げられるようになったことである。以上の分析をまとめた論文の原稿はすでに完成しており、成果は2013年度中に公表される予定である。 最後に第三の課題として、地方におけるジェンダー政治を分析するために基礎的な資料の収集と分析の準備作業を行った。具体的には、地方議会の選挙公報を収集し、データ化する作業を行った。データの分析とその成果の報告については次年度以降に行う予定である。 その他の成果として、教育基本法の改正過程におけるジェンダー政治の展開について分析した結果を英語でまとめ、7月にマドリードで開催された世界政治学会において報告した。また、同世界政治学会およびバルセロナで開催された政治とジェンダー学会では、日本と同じ家族主義レジームに属するといわれてきた南欧諸国の福祉レジームの変容について最新の研究成果について学ぶ機会を得た。
|