本研究の目的は、当事者らのニーズに応じた移行支援を展開させるうえで必要となる条件・体制を明らかにすることであった。平成24年度においては、前年度に開発しダウン症児の就学に適用した個別の移行支援計画の成果を踏まえ、特に以下の2点について事例を中心とした検討を行った。つまり、一つが①「各事例によって全く異なる状況を有する移行(や移行支援)に関して、移行支援計画を用いた支援事例のさらなる展開」であり、もう一つが②「移行支援計画を用いることによって、移行支援の中核を担うコーディネータや関係する支援者らのチームにどのような利点がもたらされるかに関する検討」であった。 研究の結果、移行支援計画の存在が進行的(on-going)な情報収集を行うきっかけを生み出す一方で、そこで随時蓄積される情報を的確にチームで共有し、移行支援の目標やそれを支える活動を見つけ出していく(そして、現実に整えていく)ためには、移行支援計画を管理するコーディネーターの力量が非常に問われることが明らかになった。 またその際、保護者・保育者・様々なバックグラウンドを持つ専門家・小学校教員など、異なる支援への志向性・専門性を持っているかもしれないメンバーをうまくつなぎ合わせる役割が必要であることも示唆された。同時にこのことは、単純に特定の機関内コーディネータ同士で調整を行うだけでは十分でない可能性があり、場合によっては中立的な立場からなる(またはそれを意識した)コーディネータの存在が必要であることも示唆された。 なお、前年度の研究成果に関して、第65回日本保育学会大会にて「障害のある子どもの移行支援に関する研究―ダウン症児の小学校就学における移行支援アセスメントの展開」の研究発表を行った。
|