研究課題/領域番号 |
23830115
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研究機関 | ノートルダム清心女子大学 |
研究代表者 |
濱西 栄司 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 講師 (30609607)
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キーワード | 社会運動 / サミット / グローバル化 / アラン・トゥレーヌ |
研究概要 |
2011年度、本調査研究においては、まずサミット・プロテストに関する国際比較研究の前半部分として予定通り、日伊米丁のサミット・プロテストに関するデータの比較分析をおこない、アクターが作り出すネットワークとアクションの展開について検討をおこなった。 まずアクターの動員量やネットワークのありようは、開催国によって大きく異なるだけでなく、さらに同じ社会であっても、開催年に応じて明確に違ってくることを明らかにした。たとえば伊では2000年ジェノアG8の際に大労組を中心に動員がなされ、2008年G8では再び縮小した。逆に日本では2001年九州沖縄G8よりも2008年洞爺湖G8において拡大し、NGO系と市民団体系の2つの大きなネットワークが形成された。また開催地の運動団体が全体をけん引する際の具体的なロジックとその受容のありようも明らかにした。 アクションの展開については、洞爺湖G8、ラクイラG8、ピッツバーグG20、コペンハーゲンCOP15の際のサミット会場、路上示威行動ルート、直接行動・対抗サミットの発生・開催地、そして社会センターなどのインフラの所在地を、空間的な地図の上にマッピングし、整理した。とりわけ、米伊丁では、プロテストを支えるインフラとして、社会センター、ユースセンター、コミューン、「自治区」などの自律的なスペースが活用され、数千人が一度に滞在するなど極めて重要な役割を果たしていることが明らかとなった。そして、それらのスペースが当局や地域住民との交渉のなかで維持されてきたこと、プロテストに関する地域住民とメディアの対応が相対的に見て非常に肯定的なものであること、さらに維持の背景には1970年代から現在までつづく若者の若年失業率の高さや、左派政権の強さなどがあることを明らかにした。 最後にこれらの点を日本の状況と比較することで日本の1960年代から現在に至る市民社会・政治・思想・若者の状況に関する考察を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、2008-09年の日米伊丁G8・G20・COPをめぐるサミット・プロテストに関するデータを整理・分析する作業を進めると同時に、過去の事例に関するデータ整理・分析も行っており、それらの成果をすでに部分的に公刊することができているため。とくに社会センター等の運動インフラの比較分析は、背景にある当該社会の政治情勢のより詳細な把握にもつながり、着実に成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、日米伊丁を中心に、近年と過去の事サミット・プロテスト例に関する国際・歴史比較分析を進め、その成果を公刊していく。とくに各サミット・プロテストにおけるアクター・ネットワークの特質とアクションの空間的展開を図表化、及び数量化することを試み、分析成果をわかりやすく公刊する手段を考えていく。また、2012年9月の国際社会学会2nd ISA Forum(アルゼンチン・ブエノスアイレス)での研究報告、及び国際ジャーナルへの投稿等を通じて、研究成果を海外に発信していく作業を強化していくことにしたい。
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