本年度は、まず昨年度に実施した日伊米丁開催のG8/G20/COPをめぐるサミットに対するプロテストネットワークとアクションの比較分析をふまえ、各開催国のサミット・プロテストの歴史をさらに分析しつつ、新たに発生したプロテストに関する情報の収集を行った。その上でそれらの実証的データの分析を進め、運動メカニズムに関する従来の「動員」モデルに代わる新たな総合的説明モデル――具体的には、制度構造レベル(労働運動戦略、福祉レジーム、紛争イシュー、新しい社会的リスク、ソーシャル・ガヴァナンス)・組織連関レベル(組織構造、組織間関係、資源、フレーム、政治環境等)・相互行為レベル(示威・直接行動の発生場所・ルート、地理的空間、地域住民や企業の反応、現地メディアの報道、警察・機動隊との衝突・拘留、救援活動の展開)の諸要因の組合せから、サミット・プロテストの全般的傾向と差異を説明する――の構築を進めた。 また、現代の運動の特徴・意義に関する社会学・政治学諸研究の理論的検討を進め、とりわけ「アクシオンの社会学」(前期・中期・後期・後継者たち)の系譜についてその展開を詳細に追い、従来の「社会運動」概念に代わるものとして提起されてきた新概念・理論(「経験運動」「コモンアクション」「経験の空間」等)の検討を重点的に進めた。その上で、経験運動論をモダニティ論と関係付けつつ、「集合的アイデンティティ」概念と対比させることで規範的な解釈枠組みとして再構築し、その観点からサミット・プロテスト参加者の主観的データに関する分析を行った。 以上の成果をもとに、博士論文を土台とする学術書籍・学術論文を執筆し、また国内学会及び国際社会学会第2回社会学フォーラム(ブエノスアイレス)において研究報告を行った。関連して、国際社会学会研究委員会47の若手研究者を中心に、グローバルな運動に関する研究ネットワークの構築を進めた。
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