本年度は、昨年度の成果を深めることを主な目的として、これまで取り組んできた諸事項に関する資料の収集・分析と、諸点の整理・検討に従事した。ドイツの方法論に関しては、訪独して、評価法学の先駆とされるヴェスターマンを中心に、資料収集に取り組んだ。この収集作業に際しては、過去の資料だけでなく、本研究課題にも関連するところの、最近のドイツの研究動向についてもアンテナを張った。その結果、ヴェスターマンや評価法学に関する重要な文献を発見することができた。また、戦後初期当時における、ザウアーをはじめとした大学の同僚などの関係者との(人的・理論的)関係についても、考察すべき諸課題が明らかとなり、今日に至るまでそれらの分析・整理・検討に勤しんでいる。加えて、本研究の今日的意義を強く意識しながら、ドイツにおいて現在繰り広げられている方法論争の動向にも注視し続けている。 日本の方法論史については、これまで検討を進めてきていた牧野英一の業績のほか、小野清一郎を代表とする、いわゆる日本法理(研究会)に加えて、戦前の法実務に関しても、大審院長を勤めた横田秀雄を中心に、資料の広範な収集と分析に従事した。しかしながら、いずれも各論的に重いテーマであり、とりわけ日本法理については、戦時の体制との関係性というデリケートな問題があることから、分析の作業は容易なものとはいえず、各論のみならず、それらを俯瞰するための視点を提出するという総論的な作業についても難航していることを認めざるを得ない。 日独両国においても、戦時期~戦後にかけての方法論に関する先行研究が乏しいという背景的事情もあるが、できるだけ早期に、各点に関するまとまった成果を提出すべく、鋭意努力を積み重ねている。
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