研究課題/領域番号 |
23830119
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研究機関 | 沖縄キリスト教学院大学 |
研究代表者 |
照屋 信治 沖縄キリスト教学院大学, 人文学部, 准教授 (70612498)
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キーワード | 『沖縄教育』 / 『琉球教育』 / 沖縄県教育会 / 新田義尊 / 同化 |
研究概要 |
2011(平成23)年度の研究成果を、「新田義尊-「沖縄は沖縄なり琉球にあらず」という教育-」として、2012年7月に刊行予定の『近代沖縄を生きた教員たち-数量・組織・個体-(仮題、榕樹書林)に公表予定である。 同論文では、近代沖縄教育の思想史的な骨格を形作った沖縄県師範学校教諭・新田義尊の生涯と思想を、新たに発見した資料(履歴書など)や、『琉球教育』の書誌的な分析を通じて明らかにしたものである。新田の個人史を明らかにすると同時に、雑誌編集担当者として匿名性のもとに教育会内部の世論形成を図ろうとした側面を明らかにした。 沖縄の近代思想史研究は1910年代の伊波普猷や日清・日露戦間期の太田朝敷から開始されるが、彼らが格闘したのは、彼らに先行し沖縄像を提示した大和(日本)より来沖した役人・教師・研究者であった。その乗り越えられる壁の一人として沖縄人の前に立ちはだかったのが新田であった。新田の思想と行動を明らかにすることは、近代沖縄思想史研究の骨格や論点を明確にする意義がある。また、本研究の目的は、従来、政府や行政による教育政策の分析を中心に展開され、「同化教育」「皇民化教育」とその本質が規定される近代沖縄教育史を、沖縄人教師の視点から捉え直すことであるが、本論文は、沖縄人教師たちの視点から、師であり論敵でもある新田義尊の姿を浮かび上がらせることで、沖縄人教師たちの思想的格闘の環境を明らかにした意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011(平成23)年度の目標として、日清・日露戦間期の『琉球教育』『琉球新報』を対象に基礎的なデータの収集・整理と、それにもとづく思想史的な論文のとりまとめなどをあげた。平成23年度に沖縄県師範学校教諭・新田義尊に関する思想史的な研究を論文化することができた。2012年7月に刊行予定の共著に公表予定である。出版に向けた最終調整を行っている。よって、研究目標の達成度として、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2012(平成24)年度の主な具体的目標として、1938年から1940年に刊行された『琉球新報』における教育関連記事の検討と基礎的なデータの作成をあげている。『沖縄日報』などの新聞も存在するので、それらについても可能な限り基礎的なデータ整理の作業を行いたい。それらに基づき、次年度以降に、島袋源一郎ら教育関係者や沖縄県教育会の分析・論文化を行う予定であるが、可能であれば、2012年度から着手する。ただし、同期間を含む総力戦体制期の研究は、戦後史研究との連続性を押さえる必要があるため、論文の公表には時間がかかることが予想される。
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