研究課題/領域番号 |
23830122
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研究機関 | 富山短期大学 |
研究代表者 |
寺本 佳苗 富山短期大学, 経営情報学科, 講師 (50610341)
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キーワード | コーズマーケティング / 企業の社会的責任 / CSR報告書 / 組織特性 |
研究概要 |
コーズマーケティングは商品の売上の一部を、社会的課題を解決する資金にすることを明らかにしながら、消費者の購買を促す手法であり、経済的な影響力を有する企業の取組みは重要性を持つ。コーズマーケティングの現状を分析するために、CSR報告書のデータベースである「CSR図書館.net」と「社会・環境報告書データベース」にCSR報告書を掲載している企業391社を対象に、CSR報告書やホームページ等を通じて調査した。データベース化した項目は、企業名、業種、組織形態、従業員数、寄付活動、CRM商品情報、取組み時期、金額を投じた団体・活動、以上8項目である。ただし、公表情報からは明らかにされていない項目もあった。 組織形態(専従組織の有無)については、97%の企業で記載されており、制度化の重要性が認識されているといえる。さらに調査結果を分析すると、コーズマーケティングに類する取り組みは、次の三つに分類できる。一つは、自社製品とコーズとの適合性をふまえて企業が独自に開発し、消費者の購買につなげるタイプで、一般にコーズマーケティングと言われるものである。代表的な例として、王子製紙の「千のトイレプロジェクト」があげられ、15%に上る企業で取り組まれている。二つは、他の組織が開始したコーズマーケティングに参画するタイプで、ピンクリボン・キャンペーンがその代表である。同キャンペーンにはおよそ80%を超える企業で取り組まれていた。三つは、従業員をコーズマーケティングの対象にするタイプであり、これは先に示した二つ目のタイプと組み合わせて取り入れられる。現在、TABLE FOR TWO Internationalや支援型自動販売機を導入する企業が増加しつつあり、TFTの導入を記載した企業は5%にも上る。このように、コーズマーケティングは企業が取り組みやすいように導入されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、2003年度から2010年度の期間に、CSR報告書を発行している日本企業を調査対象として研究を計画した。しかし、CSR報告書のデータベースには2007年度は30社程度、2006年度以前は10社程度、それ以前はデータベース化されていなかった。そのため、2010年度以前の情報は2012度に企業に配布する調査票での情報収集が効率的であると判断し、2011年度に発行されたCSR報告書(391社)に限定して調査した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はコーズマーケティングのリスクに関する意識調査を通し、企業がCSR活動のリスクをいかに捉えているかについて明らかにする。計画当初は情報開示のリスクについて明らかにしようと想定していたが、平成23年度の研究の結果、寄付活動を行っていることを記載した企業は94%に上ったが、自社が開発したコーズマーケティングに取り組む企業は15%であった。そこで、寄付活動には取り組むがコーズマーケティングを取り入れない理由を探ることで、コーズマーケティングが持つリスクを明らかにできると考え、質問票の質問項目を工夫・修正する。なお、CSR報告書やホームページを通じて提供された情報をもとに調査したため、そこで得られなかった情報も収集する予定である。
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