コーズマーケティングは商品の売上の一部を、社会的課題を解決する資金にすることを明らかにしながら、消費者の購買を促す手法である。平成24年度は企業にコーズマーケティングの取り組みをためらわせる要因と、コーズマーケティングに取り組む企業の特性を明らかにすることを目的としてアンケート調査を実施した。調査対象とした企業はCSR報告書データベースに2011年度発行の報告書を掲載していた日本企業・財団法人の390団体である。アンケートは2013年1月初旬に各組織に配布、1月末に回収、アンケートの回収数は74団体で、およそ19%の回収率であった。 調査結果から、コーズマーケティングの取り組みを阻むリスク要因として、①認知度の低さ、②一般消費財以外の取り組み難さ、③パートナーとの調整の手間、④説明責任の重さが実施を阻む主な要因であることが分かった。また、社会貢献活動とマーケティングを組み合わせる手法が感覚的に馴染まない、という回答もみられた。なお、一般消費財を取り扱っていない場合、コーズマーケティング実施に向けて検討を始めても、組織内調整が困難な傾向が明らかになった。コーズマーケティングを実施している組織の特性として見られる傾向は、①一般消費財を取り扱っていること、②CSRや環境に取り組むための専任部署が存在することである。前者については、一般消費財を扱っていない企業でもコーズマーケティングの検討を行った、または検討を始めている企業があることから、今後、従前とは異なるコーズマーケティング商品が開発されると考えられる。後者については、コーズマーケティングを提案した部署と、コーズマーケティングの管理を担当している部署が異なる企業が多くあり、社内調整の煩雑さが伺えた。以上、コーズマーケティングの取り組みを阻むリスク要因と企業特性、さらに展望について明らかにした。
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