研究課題/領域番号 |
23830124
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研究機関 | 新見公立短期大学 |
研究代表者 |
武石 典史 新見公立短期大学, 幼児教育学科, 講師 (00613655)
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キーワード | 近代化 / 比較分析 / 社会史 / 近代学 |
研究概要 |
23年度は、日本と中国(清)の動向に特に焦点を当てて、後発国の近代化初期段階への対応のあり方、すなわち近代化と「近代的な知の体系」の受容方法との関係性を考察した。具体的に記すと、第一に知識人の「近代的な知の体系」に対する態度、第二に国レベルにおける「近代的な知の体系」の導入過程、第三に「お雇い外国人」の利用度、の比較分析をもとにした考察である。 後発国の近代化は先発国からの近代的技術の輸入によって開始されることになるため、両者の間の関係は非連続性的となる。この非連続性-テクノロジーギャップ-を埋めるのが、近代的な学校教育である。 上記の第一の課題であるが、日本の知識人は「近代学知」の摂取に努めたが、中国人の知識人は排撃する側という違いがあった。第二の点については、日本は非連続性を自覚していたゆえ、「近代学知」と近代学校教育とをワンパッケージに導入し、結果として教育機会の開放性を高めていったが、中国は科挙体制への信頼が揺らぐことはなかったため「伝統的な知の体系」から脱却できなかった。第三の関しては、日本は19世紀から20世紀にかけて「お雇い外国人」を斬り捨て自前での教育に努めていたのに対し、中国では20世紀に入っても依然として多国籍(日本人含む)なお雇い外国人への依存度が高かった。 以上の分析が示唆するのは、先発国からの文明移植という手段で社会発展を軌道にのせるには、学校を導入窓口にして、まず体系化された近代学校教育での人材選抜・育成を制度化するとともに、教育機会を開放的にして学校を移動の装置とすることが不可欠となるということである。両国の経験をもとにした本研究の知見は、いまだ社会発展に苦労している後発国の可能性を模索するうえで、極めて重要な意義を持つものと強調できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、国立公文書館や東京都公文書館所蔵の「近代日本に留学した中国人に関する公文書」の整理を計画していた。しかし、平成23年11月から平成24年5月まで東京都公文書館が仮移転に伴って休館状態にあった。したがって、東京都公文書館所蔵史料の整理の進捗状況の分だけ、「やや遅れている」状態にあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、1年目(昨年度)の計画であった東京都公文書館所蔵史料の整理を精力的に進め、遅れを取り戻す予定である。ただし、「仮移転先」での閲覧になるため、諸制限が予想される。研究の遂行に向けて他の史料館史料で補うなど、臨機応変に対応していく。 また、24年度は夏季に海外の研究機関での報告を予定している。現在、機関を選定中であるが、「中国の大学」、「非中国のアジアエリアの大学」、「中国の大学と非中国のアジアエリアの大学」の3つのパターンのなかから、先方の事情を考慮しつつ、早期に決定する。
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