衛星高度計による海表面高度偏差データを用いて,黒潮続流ジェットの十年スケール変動のメカニズムについて解析を行った.この結果,黒潮続流の緯度の十年スケール変動は北太平洋東部で大気変動により励起され西方伝播する波により生じ,この波は従来考えられていた線形長波ロスビー波ではなく,申請者が過去の研究で理論を構築した,ジェットに捕捉されたJet-trappedロスビー波として西方伝播していることを明らかにしました.さらにこの西方伝播中にシグナルの南北スケールが狭くなり,かつ振幅が大きくなることを見出し,このメカニズムとして,シグナルの渦位偏差の保存と背景場のジェットの上流域と下流域での強さの違いという2つのプロセスにより説明されことを示した.またこのJet-trappedロスビー波の日本東岸への入射により,ジェットの南北の再循環の強さが変動しジェットの流速を変え,さらにその流速変動が東方へと伝播することを見出した.この東方へのシグナルの伝播は,西岸境界からの移流の影響が重要であることを示唆する.以上の結果は,黒潮続流ジェットの緯度や強さの変動について数年程度の予測可能性があることを示し,その予測に対し物理的な根拠を与えるものである. これらの結果についてまとめた論文は,国際誌であるJournal of Physical Oceanographyに掲載された.また日・米・中・韓・露・加の6か国の加盟国からなる政府間組織である北太平洋海洋科学機構PICESの国際会議PICES-2012で招待講演を行い,ベストプレゼンテーション賞を受賞しました.
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