水は地球上において最も重要な物質のひとつであるが、氷への結晶化の際の体積膨脹など分子性液体としては極めて特異な性質を示す物質であり、また、通常の冷却方法でガラス状態を実現することは不可能とされている。ところが、このような特異性は、塩添加や圧力印可によって減少する傾向にある。一方、塩添加や圧力印可は、液体中で水分子が形成する四面体型の局所安定構造に直接的影響を与えることがわかっている。このことは、こうした中距離構造が、水の特異性、さらには、ガラス転移の起源にせまる鍵を握っていると考えられる。本研究では、塩添加によりガラス形性能が劇的に増加することを利用して、ガラス転移におけるエイジング過程についての研究を行い、そのキネティクスがスケーリング可能であることを実験的に見出した。エイジング過程ではエンタルピーが減少するので、系の秩序化が起こっていると予想でき、これにも中距離構造が関係していると考えられる。
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