研究概要 |
本年度は塩谷隆氏(東北大)と共同でobservable距離に関する多様体の収束理論の研究を行った. Observable距離の定義から測度距離空間の列が測度の集中現象をおこしていることとこの距離に関して一点から成る空間に収束することは同値である.この距離に関する収束は測度の集中現象と従来のGromov-Hausdorff収束の理論の一般化と思える.近年,Lott-VillaniやSturmによって確率測度付きの弧長空間に対してRiemann多様体におけるRicci曲率がK以上であるという条件CD(K,∞)が導入され,研究が活発に行われている.我々はCD(K,∞)という条件がobservable距離に関する収束で保たれることを示した.特にこれらの空間列の極限は連結となる.一方,閉Riemann多様体の列のLaplacianの第k固有値が無限大に無限大に発散していてある条件を満たすとき,observable距離に関して高々k点からなる距離空間に収束することがわかる.非負Ricci曲率と第k固有値が無限大に発散すると仮定すると我々の結果から極限空間は1点からなることがわかり,特にこの閉Riemam多様体の列は測度の集中現象を起こしていることがわかる.E.Milmanの結果により非負Ricci曲率を持つ閉Riemam多様体の列が測度の集中現象を起こしていると,第1固有値が無限に発散することがわかっているので,これらのことによりLaplacianの固有値の間の次元普遍不等式を得たことになる.これらの結果は私が申請当初挙げた次の問題の一つの答えと応用を与えたと考えることができ,当初の目的の一つを達成することができたと言える:閉 Riemann多様体の列M_nがある測度距離空間Mにobservable距離に関して収束した際に,M_nの解析的または幾何学的性質はどの位極限空間Mの解析的または幾何学的性質に近いか?特に,これらの性質の中で収束で保たれるものは何か?
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