研究概要 |
絡み目のラスムッセン不変量とは、コバノブホモロジーの理論を用いて定義される整数値の不変量である。本研究の目的は、1.絡み目のラスムッセン不変量の基本的な性質の解明、2.絡み目のラスムッセン不変量の評価の改良、3.絡み目のラスムッセン不変量の応用の探求、の3点であった。平成23年度の研究目標は、ラスムッセン不変量が、絡み目に対する三つの基本的な操作である鏡像、ミューテーション、連結和でどのように変化するのかを明らかにすることであった。 研究実績:1.結び目のコボルディズムを構成するごとに,ラスムッセン不変量の評価が得られる.私は,川村友美氏によるコボルディズムの構成を用いてラスムッセン不変量を調べ,その手法により、いつラスムッセン不変量を決定できるのかを書き下した.平成23年度には,絡み目のラスムッセン不変量について研究し,結び目の場合のアナロジーが成り立つことを証明した.これにより、等質絡み目に関する鏡像の振る舞いを明らかにした。(論文は準備中) 2.四次元多様体は,カービー図式と呼ばれる(枠,又はドット付き)絡み目により表される.鄭仁大氏との共同研究により,無限個の(一つの枠付き結び目からなる)カービー図式表示を持つ4次元多様体を構成した.その手法の応用により,リボン・スライス予想の反例候補を組織的に構成する方法を得た.(論文は準備中) 3.バンド手術で結び目をほどくことは,その結び目が四次元球体でどのような曲面を張るのかと密接に関わりがある.金信泰造氏との共同研究により,四次元球体で(自然な高さ関数に対する)臨界点が2つの向き付け可能な曲面は張るが,臨界点が2つの向き付け不可能な曲面は張れない結び目が無限個存在することを証明した.(論文は投稿中).
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