ラスムッセン不変量は結び目不変量であり、BeliakovaとWehrliにより絡み目に拡張された。本研究において、Beliakova-Wehrli不変量の研究を行った。 Beliakova-Wehrli不変量に関する懸案の問題は、この不変量が絡み目の鏡像に関してどのように振る舞うかであった。これに関して2011年度に代表研究者は部分的な解答を得た。その直後にJ.Pardonは、Beliakov-Wehrliとは異なるラスムッセン不変量の絡み目への拡張を与え、その不変量の鏡像に関する振る舞いを完全に記述した。これにより、当初の問題は(思わぬ形で)解決した。Pardonの不変量の性質を調べることは今後の課題である。 ほぼ同時期に、KronheimerとMrowkaにより結び目のラスムッセン不変量に関する大きな進展があった。彼らはインスタントンホモロジーの変種を用いてラスムッセン不変量の新しい定義を与えた。系として、ラスムッセン不変量を用いて滑らかなカテゴリーにおける4次元ポアンカレ予想を反証するというFreedman-Gompf-Morrison-Walkerのアイデアは実行不可能であることを示した。 上述の研究に刺激を受けて、2012年度はFreedman-Gompf-Morrison-Walkerのアイデアを(ラスムッセン不変量と非常に関連がある)スライス結び目の構成に応用することを試みた。鄭仁大氏、大前裕佳氏、竹内勝則氏との共同研究において、スライス結び目の候補の構成法を述べた。丹下基生氏との共同研究において、一つの例に関して実際にスライス結び目になることを示した。さらに、より一般的な結果に関する論文を現在執筆中である。
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